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◎大学における知財教育 第十回

3.現状分析
(1)四段階の第二ステージ(大学ごとの格差拡大、教員ごとの格差)
 

産学連携を産業界の事業サイクルに見立てて、「黎明期、成長期、成熟期、衰退期」という
四段階に進化すると仮定します。
すると、現在の産学連携は第二ステージに入りかけている、と見ることができます。

黎明期には、多くの混乱がありました。
知財本部を設立したが何も活動を開始できない、という実例にも出くわしました。
1年ほど前ですが、「○○大学の知財本部に協力してくれ。」という一本の電話があったので、「何のお手伝いができるか分かりませんが、ご協力いたします。」と返事をし、
会議の日程などファックスを戴きました。

ところが、その電話以降、何の連絡もありません。

その大学は、何から初めて何をしてどこへ到達すればよいのか、
まったくビジョンがなかったのでしょうか。

やるべきことは山積みだったのに予算が確保できなかったのでしょうか。
極端な事例なのかもしれませんが、又聞きや調査結果ではない、
現実に体験した事例としてご紹介いたしました。

さて、黎明期にとどまっている大学もあるのでしょうが、
動きの早い大学では取捨選択に入り始めたように感じます。
支援センターへの要請が、基礎的なセミナーから実務的なセミナーに変化してきているからです。

たとえば、「特許明細書の書き方」という講座をお願いします、
「拒絶理由への対応実務」という内容を分野別にお願いします、といった具合です。

一方、「知財制度の基本を二時間程度で教えてください」、という大学からのご要望は、
あまり聞かれなくなりました。
大抵の大学が「制度の基本の話はもう不要」というレベルに達したのではないかと推測できます。
こうしたニーズの変化からも、黎明期は既に過ぎたのではないか、と感じるのです。

さて、成長期には何が起きるのでしょうか?
産業界の事業サイクルでは、競争が激化し、いわゆる勝ち組と負け組との区別が
はっきりし始める時期です。

個性が磨かれ、各プレーヤーの特徴がはっきりする時期です。
こうした分析がある程度正しいのであれば、勝ち組に残るため、
あるいは負け組に分類されないための統合、
提携などの相互関係を模索する姿が見られるようになることでしょう。
 
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