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◎大学における知財教育 第十一回

(2)知財本部とクラシックな教員

黎明期にとどまっている大学では、経験豊かな知財マンが、
知財本部で苦しんでいる姿は、色々なところで見聞きしています。

いや、成長期の大学でも同じかも知れません。

伝統のある大学では、そのプライドが知財マインドの浸透を邪魔している、
プライドが自らの首を締めている、とある国立大学の知財マンにお聞きしました。

『特許出願は低俗、論文発表こそが自分の本分』と考えるクラシック(!)な教員は、
世界的な権威を多数輩出しているようなプライドの高い大学ならでは、
と苦々しい表情で語っていらっしゃいました。

そういう先生方に、『右手に論文、左手に特許』という説得をしようとしても、
特許に対して個性的な持論を展開され、時には知財マンを説得しにかかるなど、
なかなか理解してもらえないようです。

そういうクラシックな大学教員は、我が道を突き進んでいただくしかありません。
『平等な教育』、というコンセプトが時代にそぐわないとも言えます。

経済界は、キャッチアップ経済からフロントランナー経済にシフトしているのですから。

ところが、現場では「先生は我が道を行って下さい。」と割り切ることはできないようです。
『平等な教育』という呪縛があるのでしょうか。

こういうお話を聞くと、やや深刻な気持ちになります。
個性的な教授との不毛なやりとりが何度も何度も続いた結果、
有能な知財マンが疲労したり、諦めの境地に追いやられてしまうとすれば、
「知の無駄遣い」です。

「知の無駄遣い」を減らすことが、
産学連携の目的の一つでもあったはずなのに。

前記の「疲労する知財マン」を救うため、その呪縛を解いてあげられるのは、
トップダウンの意志決定と実行のできるリーダーです。

強力なリーダーシップを発揮できるリーダーがいるかいないか、
混乱するその大学の運命を決定づけるように思えます。

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