「おまえ、そんなの、贅沢な悩みだよお」
真顔で、真剣に、真正面から相談したというのに、悪友の答えは、私を呆然とさせた。
彼に対して呆然としたのではない、自分に対して呆然としたのだ。
理由は、10年以上前にも、同じ彼の前で同じような場面があったことを思い出したからだ。
悩みの中身は異なるし、今とは家族構成も立場も違う。
しかし、受け答えが同じなのだ。変わらぬ友には感謝したい。
しかし、自分は成長せずに取り残されている。
10年前の自分は、10歳プラスした自分の姿は想像できなかったが、
「ああいう風になれればいいな。」とか、
「ああはなりたくないな。」というイメージは漠然とあったような気がする。
「ああはなりたくない」ということの中でも頻繁に思っていることはできているような気がするが、
「ああいう風になれればいいな」の方は、ほとんどできていないじゃないか!
地下鉄の駅で彼と別れるまで気づかなかったが、いつもよりだいぶ呑んでしまっていた。
頭がグラグラする。
吊革を握る手が痛くなるほど、身体がずり落ちたがった。
早く降りて嫌悪感を吐き出したかったが、降りるべき駅はまだまだ先だ。
嫌悪感を頭の隅に押しやるために、楽しいことを考えようとしている自分がアホらしい・・・。