コンテンツにスキップするには Enter キーを押してください

◎大学における知財教育 第十四回

(5)支援センターへの依頼内容の変化

「あのう、弁理士会さんの支援センターは、特許や商標のセミナーをやっていただけると
お聞きしたのですが、何をどうすればやっていただけるのでしょうか?」

「あの、いつ頃、どのくらいの時間で、どこでやることを予定されているのでしょうか?」

「ええ、私ども、どれくらいの回数や時間が必要なのかも、さっぱり分かりませんので、
そこらへんから教えていただけませんか?」

「あ、いや、スケジュールやら予算やら会場をどこにしようとか、何かご予定はおありですよね?」

「いや、そういうこともアドバイスしていただけるのかと…。」

「さて、全く何も決まっていないのですか? 
何から決めたらいいか、についてもご相談して決めるとなると、大変なことですね…。」

このようなやり取りに象徴されるように、2年ほど前までは、
ご依頼をいただく側が何をどうしたらいいのかさえ、固まっていなかったように思います。

ところが支援センターの仕事としては、昨年くらいから、こうしたご相談は減ったように感じます。
その一方、知財の実務、具体的には特許や商標の検索方法をテーマとした
セミナーのご依頼が増えているという実感があります。

前述したように「知財とは何か」という基礎セミナーをお願いしますというご依頼から、
すぐに使えるテクニック、知識が欲しい、実務的なことを教えて欲しい、というご依頼へ変化しています。

知財検索がテーマになると、聴講者がパソコンを使える環境が必要となりますが、
最近ではそうした環境を主催者側で用意していただけることも増えてきました。

ほんの少し前までは、聴講者にパソコンおよび通信機器の持参を呼びかけたりしていたのです。
ITインフラの充実が知財教育の現場を進化させています。

近い将来、e?ラーニングにまで進化するのでしょうか。

なお、テーマが絞られるということは、聴講者の数が絞られることにつながると予想されます。
聴講者が少ないときめ細かい対応が必要となりますが、
聴講者との双方向性が確保しやすいので密度が高められるというメリットがあります。

デメリットとしては、「聴講者が何人」という数値が成果であるとしなければならない運営側、
密度を下げることができても人件費が下げられないという費用面などが挙げられます。

余談ですが、実務を教えるセミナーは弁理士の首を絞めるものだから止めよ、
という意見は常にあります。

しかし、セミナーを受講したくらいで身につけられるような実務サービスでは、
実務セミナーを開くか否かに関わらず、いずれお金を出してもらえなくなるはず。
気前よく実務セミナーを開催しつつ「知財実務は奥が深いのだな」
と悟っていただけるような内容とすることは、弁理士業界においても重要ではないでしょうか。

 →第十五回へ