1.始めに
昨今叫ばれている「産学連携」は、
平成14年の知財戦略大綱や知的財産基本法の中で日本再生の切り札の一つとして位置づけられており、
大学で誕生する発明を産業界で活かすということは、その中の一項目である(注1)。
さて、表1から分かるように、日本は、大学の研究者の数や使われる研究費において、
米やドイツにひけを取っていない。
この表1をご覧になったら、知的財産に関わる誰もが、
「稼げる技術」という面でも米国やドイツに負けないようにしたいと思うのではないだろうか。
「産学連携」には、経済産業省、文部科学省などにおいても、多くの予算がつぎ込まれている。
また、多くの予算が配分される背景において、多くの方々が議論を重ね、多くの方々が動いている。
こうした現状を、単なる「産学連携ブーム」で終わらせてはならない。
経済産業省や文部科学省が使う税金がつぎ込まれるところに群がるだけの人達を押し退け、
額に汗して働いた方々が報われる方向に導いていかなければ、
日本の借金が膨らむだけで年月が過ぎてしまうからである。
「学から産への技術移転」に活躍する人々については、
既に「TLOとライセンスアソシエイト」(渡部俊也、隅蔵康一共著)という
立派な本がBKC社から出版されている
(「TLO」の定義については注2)。
そこでは、本稿で取り上げるリクルート社が「学から産への技術移転」を
ビジネスとして取り組んだ様子も克明に記載されている。
立派な本を前になぜ私がこの寄稿を思いついたのかというと、
日々走り続けるリクルート社のライセンスアソシエイトの熱い姿を、
弁理士などパテントの読者の皆さんにもっと伝えたかったからである。
彼らに接していると、弁理士や特許の業界に欠けている、
あるいは忘れかけている「熱い想い」が呼び起こされるからである。
日々走り続ける真なるアソシエイトを弁理士がサポートできなければ、
産学連携も日本再生も危うくなると危機感を抱いているからである。
* 注1
産学連携とは、大学を起点とする日本経済活性化のための構造改革プランである(文部科学省)。
また、経済産業省は、技術の移転からスタートアップ(事業化)という目的のために、
産業界にも、大学にもやっていただきたいことがたくさんある、
と「産学連携」についてコメントしている。
その他、産業競争力という視点から産学連携を分析している
「大丈夫か 日本の産業競争力」(馬場錬成著 プレジデント社)の5章,6章も参考にしてください。
* 注2
TLO(Technology Licensing Organization)とは、
特許性、市場性を評価した上で、大学等の研究者の研究成果を譲り受けて特許化するとともに、
積極的に企業への情報提供、マーケティングを行い、
最適な企業へのライセンスを行うなどによって技術移転を図るための組織である。
なお、TLOが「テクノロジー」の移転機関であって、
「パテント」の移転機関ではない理由については考察する価値があるので、
一度お考えになってください。
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(投稿日:平成15年2月28日)