特許事務所という職場が成り立っているのはなぜか?
知財部という部署が存在しなければならない理由はなぜか?
私は、時々立ち止まって(立ち止まらずにいられず)考えています。
まずは、仕事の中身を単純化して分析してみましょう。
1)特許法36条を中心とした特許出願のフォーマット(A0)がある。
そのフォーマットに、発明者のアウトプット情報(A1)を書き換える。
その課程に、知財部と特許事務所がある。
2)知財部は、発明者のアウトプット情報(A1)に対して組織にとってどのような書き換えをすれば
利益を最大化することができるのかを考え、書き換えのための仕様書(A2)を作成する。
3)特許事務所は、仕様書の内容(A2)をフォーマット(A0)に変換する、
すなわち、特許明細書、特許請求の範囲および図面(A3)に書き換える。
特許事務所の立場で考えると、以下のような分類ができます。
a) 知財部がしっかりした企業からの仕事は、A2≒A3である。
b) 知財部またはその役割をする部署がない企業からの仕事は、A2が存在しない。
a)のタイプは単価が低い。
あるいは下落傾向にあります。数をこなさなければ特許事務所の経営は成り立ちません。
特許事務所では初心者向けの仕事として適している、とされる傾向があります。
b)のタイプは中小企業、ベンチャー企業では当たり前です。
また近年では、大企業においてもこのタイプの仕事が増える傾向にある、と私は感じています。
(この傾向への言及は別項にて)
a)のタイプの仕事ばかりをしてきたら、b)のタイプの仕事には対応できない。
職人としての仕事だけではなく、サービス業としての仕事も求められるからです。
換言すれば(極論を言えば)、a)は二次産業、b)がサービス産業でありましょう。
上記のように分析したのは初めてですが、弁理士試験に合格した直後から、薄々感じてきたことです。
私にとっては、こうしたことに気づいたことはショックでした。
自分はコミュニケーションが下手だから、特許事務所という職場を選んだ、という面がありました。
一人でコツコツやれる仕事であろう、と予想していたのです。
コツコツやる単価の低い仕事を選ぶのか、
苦手意識を封印してサービス業としてやっていくためのブラッシュアップをすべきなのか、・・・。
ここで悩むところだったのかもしれませんが、私の場合、悩みようがありませんでした。
所属していた職場において、b)を要求されるクライアントばかりを担当するようになったからです。
(続く)