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◎弁理士試験:二次試験とは何か(3)

1.前々回の「入力能力」についての思い出

入力能力とは、「問題文を良く読め」という一言に尽きます。
が、良く読むだけではなく、総合的な判断力も必要な場合があった という体験のご紹介です。

2.平成3年の意匠法の出題

古い話で恐縮です。
平成3年の意匠法の出題に『登録意匠の利用について論ぜよ』というものがありました。
模範答案を見ずに考えてみてくださいね。

『登録意匠の利用』って何でしょうか?
日本語としては「登録意匠を利用するという場合」と読めてしまいますよね。
とすると、意匠法26条についての出題ではなく、特許法72条の出題なのでしょうか?
私は、本番の最中、このような疑問に襲われました。

日本語としての正しさを追求したら特許法72条となってしまう。
しかし、意匠法の出題なのだから意匠法26条を書くべきではないのか!? 
パニックに陥る寸前で、このように判断し、答案を構成していきました。

試験直後、同じ教室にいた友人に聞いてみたら、
「登録意匠を利用するという場合である!」と自信を持って言うのです。
彼は私の通う予備校の成績が私よりも常に良かったので、少なからず動揺しました。

教室を出ると、もっと凄い話題が飛び交っていました。
意匠法1条の問題ではないか、という声が耳に入ってきたのです。
つまり、「登録意匠の保護」との対称で「登録意匠の利用」を論じるべきだ、というのです・・・

輪の中心には、最大手の予備校で総合トップの著名受験生がいました。
「私は、1条と26条を半分ずつ書いておいたけど・・・」
凄まじい筆力。想像を超えたリスクヘッジ・・・。

3.本番に向けて

前述してきたような事態を、自分が試験会場で体験しました。
離れて冷静に見てみれば、年月が経ってみれば、「何を馬鹿なことを!」とか、
「一次試験に合格した人たちのレベルもたいしたこと無いな!」と思われるかもしれません。

しかし、客観的な判断や評価は時間が経って消化されたからであって、
本番会場において主観的に判断しなければならない個々人においては、
実際にこんなことも起きていたのです。

異様な雰囲気の中でも正常に機能する「入力能力」を、
また総合的な判断力を、それぞれ鍛えておいて欲しいと願う次第です。