終電には間に合ったが、吊革にぶら下がるのもきつかった。
つらい酒だった。
「食っていくためには、しかたがないんだがな・・・」
駅を降りる。
午前1時を回っている。
6時間もしないうちに布団から出なければならない。
冷静に計算できる自分は、酔っているのか?
こんなことも忘れたいために呑んだのではないのか?
明日、また仕事に行かなければならないのは、なぜなのか?
酒の席での失言が頭の中で繰り返される。
どうして、こう、同じ失敗ばかりしてしまうのだろう・・・
ふらついていることを自覚しながら、横断歩道を渡り始めた。
左から来るヘッドライトのタイミングからは、渡り切れる。
そんなことは、冷静に判断できるのはなぜなのか。
酔っぱらいのくせに!酔っぱらいなら酔っぱらいらしくしろや。
自分に腹が立ち、その腹いせに渡り切る直前、後戻りしてみた。
キキッー、ドーン
ヘッドライトのひとつを壊す代わりに、自分の身体も破壊される。
「ドーン」と同時に、自分という割れ物がクラッシュし、
頭の中から光も音も消える。
解放された、という満足感も得る前に。
一瞬の気まぐれは、行動には結びつかず、
その代わりに、クラッシュまでの一瞬を想像しただけ。
後に残ったのは、明日もまた仕事に出かけていかなければならない、
という後悔やら責任感だった。