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◎たかが従業員、による訴状(5)

特許制度に詳しくない中小企業や、社長のワンマン会社では、
本当に発明したわけではないのに、社長を発明者としたり、
発明者に名前を連ねたりすることがある。

会社のモノは自分のモノ、とまで極端なワンマン社長はもちろん、
辞めてしまうかもしれない従業員の名前とすることに抵抗があるワンマン社長は案外多いのだ。

ジャイアント工業の場合には、発明者の欄に発明者ではないナベツの名前が入ることは
ホシノ弁理士の助言で回避された。

しかし、もし、本当の発明者が記載されずに出願されていたら、
事態は更にややこしいことになっていたはずである。

最悪の場合、せっかく成立した特許が無効になり、
ジャイアント工業もムラナカも得るモノがなくなってしまうのだ。

ムラナカ自身は、別に誰に焚き付けられたわけではなかった。
会社に貢献した貢献度が、報酬に反映されていないと感じていたのだ。

この5年間、あのワンマン社長と私とでどちらが貢献したというのか!

成果を出すまでは、時には厄介者という扱いをされて辛いこともあった。
型破りな行動力や努力をもっと認められたかったのだ。
大袈裟に言えば、社会にも貢献し、地球環境にも貢献した。

それなのに、社長賞と報酬アップだけなのか? もっと認められたかったのだ。
 「賞賛されるべきヒロイン、ヒーロー技術者が、日本にはもっともっとたくさんいる。
  あなたのような方が、そういうヒーロー達にとってのヒロインになって欲しいのです。」

偶然知り合うことになったフルヤ弁護士の一言は、
ムラナカに「訴訟」を決意させるに充分だった。