浜田は、広くはない社員食堂で西木を探し、助けを求めた。
「販促のアイディアを、特許にするにはどうしたらいいでしょうかねえ。」
西木は、法務部の変わり種。
元々、バリバリの営業マンで海外出張も多かったのだが、
体調を崩した母のために、出張も転勤も少ない本社勤務の法務部に転属を申し入れたのだ。
浜田よりも3つ上だが、同期入社だ。
マスターを出たわけでもないのに、なぜ同期なのか、はっきりとした理由は聞きそびれている。
西木は、カツカレーをさっさと平らげ、ちょっと考えて助言した。
「商品設計部の秋本に、販促ツールを携帯電話に置き換えて、
そこから直にマーケティングデータを受信できるシステムのポンチ絵を書いて貰えよ。
発明者は、秋本と、商品企画のナントカ女史にすれば、予算は商品設計から出るだろ?」
「なるほどぉ、マーケティングデータ収集装置にバーチャルで昇格させれば
出願しても恥ずかしくない発明になりますね!
予算の件はすんなり行くかどうか、分からないですけど、やってみます。
でも、西木さん、どうしてそんなこと、思いつけるんですか?
期待していたからお聞きしたんですけど。」
「営業マンは、お客様のニーズに知恵を絞って応えるのが仕事!
今のお客さんは、社外のお客さんではなくて、
法務とか知財を頼ってくれる社内の人なんだから、
そういうお客さんのニーズには、何とか応えなきゃね。」
・・・続く