【シナリオライター】
深沢が、営業部長の梅川と、Qホテルのバーで飲み始めたのは22時を回っていた。
「知財立国、知財立社なんてマスコミでは言われ始めたけど、
うちの会社はどうしても、営業中心で動いているからなあ。」
「でも、それを逆手にとっての、今回のお前のシナリオは見事なもんじゃないか。」
深沢のシナリオの役者に加わってくれた梅川が、
旨そうにバーボンのグラスに口を付ける。
「日本も、日本の会社も、外圧に弱いというのも、
今に始まったことじゃあないからな。」
法務部や知財部が他の部署から「社内官僚」と陰口を叩かれても、
深沢は平然としていられる。
今回のようなシナリオライティングや、
社内外の人脈など色々な武器を準備しているからだろう。
「X社のマル秘情報を手に入れた、っていうガセネタの後始末は、
お前がフォローしてくれるんだろうな?」
「そのフォローができそうもないから、こうしてお前の好きなバーボンを振る舞って、
前払いをしようというのが、分からないのか?」
下らない冗談を交わしながら、
深沢は、年上の女に惚れたらしい浜田の恋の行方を想像していた。
終