本原稿は、2004年1月に投稿し、特許技術懇話会232号に掲載されたものを
見直して書き改めたものです。
【要約】
特許を中心とした知財をベースにビジネスをサポートするのが
知財コンサルティングの本質であるから、
その知財の品質保証に関わる特許明細書の作成実務にて基礎力を鍛えた弁理士が、
セルフプロデュースしながら知財コンサルティングに携わっていくべきと考える
(特許明細書作成という基礎力の鍛錬なしに知財コンサルティングに挑戦するなら、
最初から経営コンサルタントを目指せば良い)。
ただし、知財コンサルティングには、特許明細書の作成だけでは身に付かない
多種多様なスキルが要求される。
たとえば、リサーチ能力、マーケティング力、企画力、交渉力などをも鍛える必要がある。
【本論】
1.始めに
ふとしたことから、
「知的財産環境の将来像」という大きなテーマに取り組ませていただくことになりました。
若輩者の弁理士である私ではありますが、
特許事務所の営業形態に疑問を持って始めた活動、
技術移転に興味を持ったことによって続けてきた活動などから感じたことを書いてみます。
(1)知財におけるコンサルティング業
自分が目指し、あるいは要請していただく仕事には、
「経営コンサルタント」という業種が参考になります。
コンサルティング業の仕事の進め方(野口吉昭著;コンサルティング・マインド・PHP文庫)と、
特許明細書作成とを比較してみたことがあります。
提案書を受け取って作成するような、いわば機械的に進められる明細書作成ではなく、
出願内容の戦略的なプランニング段階から関わるような特許明細書の作成を考えてみると、
コンサルティング手法とは非常に共通点があることが分かります。
(2)個人的な体験から考えること
幸か不幸か、私は特許事務所に勤務していた時代から
「提案書」をクライアントが用意してくれるような仕事はほとんど経験しませんでした。
クライアントの組織規模が小さいところが多く、
特許専属の担当者がいない、あるいは少ないために、
発明者のインタビューから特許明細書を作成することを繰り返してきました。
一方、出願明細書の作成という経験を積みながら、
「この出願がクライアントのビジネスに本当に役立つのだろうか?」
という疑問を感じることも多くありました。
そして、その疑問をそのままにすることなく、回答を求めてクライアントや諸先輩へ質問したり、
本を読むなどの行動へつなげていきました。
当時から「コンサルティング」ということを明確に意識していたわけではありませんが、
「ビジネス的に意味のある出願書類の作成」を目指して試行錯誤していました。
(3)明細書作成は知財コンサルティングの基礎
広い視野で「特許明細書の作成」という仕事を実行し続け、
そのクライアントに情報発信を続けることは、
コンサルティング活動をしていることになるのではないか。
ただし、クライアント(そのクライアントにおける特許担当者、という意味ではなく)に対する
情報発信までを行うのは、当該クライアントが小さな組織ではない場合には
簡単なことではありません。
また、情報発信を裏付けるリサーチ能力、マーケティング力、企画力などは、
別途鍛えておく必要があると思われます。
続く