U弁理士の事務所の電話が鳴った。
「あ、Y社のFさんですね、どうもご無沙汰しております。
特許証をお送りして以来ですね。どうされましたか?」
「どうされた、じゃないぞ!」
いきなり喧嘩口調である。
「せっかく特許を取ったのに、特許権侵害の警告という通知が来ているんだ!
これはどういうことなんだ?」
「もしかして、先行特許として調べて出てきたZ社からの警告ですか?」
「そうだよ! だが、こっちだって特許庁のお墨付きが出たんだ、
どうしてZ社から文句が出るのか説明してもらいたい。」
「御社の出願は特許されたのですが、先行するZ社の特許を利用しなければならない、
いわば応用発明として特許が成立したので、特許製品を製造するには、
Z社のライセンスを受ける必要があるのです。」
「そんな説明、聞いていないぞ!
おまえの所の説明義務違反じゃないのか?」
「いえ、説明はさせていただきましたよ。 同席された技術のGさんなら
覚えていらっしゃるのではないかと・・・」
言った、言わない、の水掛け論になりそうだ。
U弁理士は、電話口で考えた。
「これからは、利用発明として成立したことの説明は、文書で出さなくては・・・」