前項で、
『依頼者の希望、要請の全てに提案してしまったら、信頼関係の構築が困難になる』
と書いたことについて、若干補足します。
まず、依頼者の希望、要請の全てに、受託者が提案をしてしまうとすれば、
依頼者の希望、要請を全く受け入れないことと、極めて近くなってしまいます。
その場合、依頼者はどうなるでしょうか?
a)自分の考えが全面的に否定されたような気持ちになり、良い気持ちはしない。
その結果、信頼関係は築けない。
b)自分の考えが誤っていて、受託者の考えが全面的に正しいと思いこんでしまう。
その結果、思考不全に陥り、受託者による明らかな誤りや恣意も見逃してしまう。
a)は、受託者から依頼者が離れていくので、問題は少ないでしょう。
b)に関しては、 何でもかんでも「先生の仰るとおりです。」
とクライアントに言わせるコンサルタント(と呼ばれる方)を知る機会が以前ありました。
貴重な経験ではありましたが、思い出しても気分が悪くなります。
カルト教の教祖様と信者との関係のようであり、まともなビジネスの関係とは思えません。
カルト教、というたとえは極端ですが、私のような者でも
「先生の仰るとおりにいたします。」
と言いかねない依頼者もいらっしゃいます。
その兆候が見えたら、私の方から軌道修正を持ちかけます。
「御社の希望は何ですか、御社は具体的に何をされたいのですか?」
そうした質問をしても、
「先生のお考えで進めていただければ結構です。」
と繰り返されると、困ってしまいます。
一方的に教える教えられる、という関係は好ましいと思えないからです。
(だから、私は「先生」と呼ばれることが嫌いです。)