Y社(X社のライバル会社)の音響技術者C氏と、Y社の顧問弁理士D氏との会話
「Cさんが出願した特許の拒絶理由が来たんで、ご相談です。
お時間を取っていただき、ありがとうございます。」
「D先生、私が出願した特許、X社の出願に似ている、ということですよね。
全然違うので、~という反論をしてください。」
「いやあ、ありがとうございます。」
「ところで、このX社の特許出願、特許は成立していませんよね。」
「その通りです。」
「そりゃ、そうですよ。こんなの教科書通りの理論に、ちょっとだけ現場の知恵を入れただけですから。」
「へえ、X社も、防衛的な意味で出したんでしょうね。」
「それはそうと、特許はどうでもいいんですが、この特許の図面、特に図2、凄く参考になっちゃいました。」
「え?何ですか?」
「いえ、この出願の図2、反響音を抑えるのに、
極めて合理的と思われる音響室の形状が描かれているんです。」
「そ、そうなんですか?」
「私の直感ですが、この形状の音響室を造れば、
今までの反響音の実験に想定される懸念事項のいくつかが解消される可能性がありそうです。」
「そうですか。この図2は、X社内のノウハウ管理の対象だったかもしれませんね。」
「この発明者A氏が、出願ノルマに達しなくて、無理矢理、出願したんでしょうかね。」
「その予想、正しいかもしれませんよ。X社の知財担当者としたら、音響実験に詳しくなくて
図2の形状にどれだけのノウハウが潜んでいるか、気付かなかったんでしょうね。」
「いやあ、私の出願が特許になるかどうか、は別問題として、
この図面を目にすることができただけで、十分、元が取れましたよ。」