X社のCさんとパン職人Bが飲みに行った翌日、主人Aがパン職人Bに言いました。
「X社のCさんは、あなたより10歳ほど年上ですよね。
あと数年で定年退職されてしまうのではないですか?
Cさんと飲みに行くことが全く無駄とは思わないけれど、
Cさんの退職リスクについて考えた方がいいのではないですか?」
パン職人Bは即答しました。
「Cさんの後釜が誰になりそうなのかという情報収集を時々しているし、
その後釜になりそうな方とは、全て知り合いになっておくつもりです。」
主人Aは、
こいつが主人だったほうが、我々はもっと儲かったのではないだろうか
と一瞬頭をよぎりましたが、すぐに思い直しました。
「X社がある隣町には、この半年で新しいパン屋が2軒も建ちましたよ。
それらがX社に営業攻勢をかけても、あなたは勝ち続けられますか?」
パン職人Bは、自信を持って答えました。
「X社さんの好みを、私は熟知しています。
そういう好みを把握し、且つそういうパンを焼けるようになるまでに
2,3年そこらではなれませんよ。」
主人Aは、パン職人Bの職人としての生き様を尊重すべきなのか、
その生き様のリスクをヘッジまではしてやれないよ、とまで言っておくべきなのか、
答えが出ませんでした。