Z社の実質的な経営者であるA氏は、怒りの矛先をどこに向けたらいいのか
分からないくらい興奮して、顧問弁護士Bの事務所に訪れた。
A:「何の予告も無しに、許認可が取り消されたんです。
許認可が取り消されたんでは業務は継続できません。
こっちには従業員もたくさんいるのに・・・」
B:「まあ確かに厳しい処分ですから、予告は会っても良かったですね。
でも、予告が必要とは、どこにも書いていませんので、
そのことを取り上げて戦うことはできませんよ。」
A:「そうは言っても、女房に社長を譲っていたし、
私は肩書きも外していたのに・・・。」
B:「Aさん、あなたは執行猶予が付いたとはいえ、実刑を受けたんですよ。
実刑を受けたあなたが、形式的に奥様に社長を譲っても、
実質的に経営者として振る舞っていたという客観的事実は、
この相談に、社長ではなくあなたがいらっしゃったという時点で分かりますよ。」
A:「社長を辞めなさい、とアドバイスしたのはあんただろう。
だから社長は辞めた。名刺も平社員だ。何が悪い!?」
B:「行政は『実刑判決確定後もあなたが実質的には経営者に居座っていた』
ということに対して、制裁的な処分を下したのです。
もう御社の業務は継続できませんから、実質的に倒産となります。
私としては、Z社の倒産手続きのお手伝いをすることしかできません。」
経験豊富なB弁護士であったが、自分勝手な法解釈を続けるA氏の興奮をなだめるには、
相当の時間を要するであろう。
行政当局が、Z社の経営者は依然としてA氏である、という事実を押さえたのは、
Z社を取り巻く業界でも、業界規則に対しても勝手な解釈をして振る舞っていた
A氏に対する同業他社からの情報提供であろう・・・
(2008年7月作成)