Y社の知的財産部の部長であるA氏は、人事部長Bの部屋を訪れた。
A:今回のZ社から受けた特許権侵害の警告状は、かなり周到なモノと思えるんです。
訴訟になって苦戦することは間違いない。
そしてその訴訟の結果は、我が社にとって大きなダメージになりそうです。
B:それは、あなたの首が危ない、ということですか。
A:首が危ない、というところまでは行かないかもしれませんが、
「次」が2年ほど遅れますね。何か良い手はありませんか。
B:こういう手はどうでしょう。
若手の弁護士を、渉外課長といった新たなポストで迎え入れるのです。
A:今は、弁護士も数が増えて溢れている、という話は聞いたことがありますが・・・
B:そう、そういうのの中には、我が社で社内弁護士、という地位に魅力を感じる
やつもいるでしょう。
A:Z社との訴訟対応チームのY社のリーダということになれば、
それなりに世間からも注目を浴びるでしょうからね。
B:その弁護士に、Y社の対応を一任して様子を見ます。
裁判の結論が出たら、その責任上、辞めざるを得ないようにし向ければ、
Aさん、あなたの地位は安泰だ。
A:Bさん、さすがですね。
では、さっそく、今のアドバイスどおり、弁護士募集の方向で手を打ちます。
ありがとうございました。
A氏は、Z社との訴訟で自分の会社の不利益を最小限にすることよりも、
自分の地位の安定に関心があるわけだ。
また、B氏は、A氏に貸しを作ることで、後々の世渡りにおいて
何かと役に立つのだろう。
しかし、そんなものは悪だ! と声を大にして言える者は、どれだけいるだろうか。
(2008年8月作成)