弁理士試験に合格しても、実務ができるようにならないのに、
そんな試験をなぜやっているのか、
という難問を吹っ掛けられることがあります。
これに対して、非の打ち所がないというような回答はできませんが、
私はおおむね、以下のように考えています。
第一に、「実務そのもの」を試験問題としては、採点基準が作成できない。
このことは、実務をしていればおよそ理解できると思います。
実務の合格点は、依頼者によって千差万別ですし、満点もありません。
「QCDS(質、価格、デリバリー、サービス)」によっても、
合格点は異なってきます。
なお、弁理士試験の二次試験で一度だけ(私の知る限りですが)、
特許明細書を作成させる出題がありました。
しかし、翌年以後、一度も出ていませんから、合格点や採点基準の設定が困難であり、
採点者によるバラツキなどを解消する妙案もなかったのだろうと想像しています。
第二に、実務に必要な法律の根底を理解しなくては、実務の質を高めるための
基礎(ベース)ができません。
だから、実務に必要な法律科目が必須となっていることには合理性がある、
と考えられます。
なお、上記の難問を吹っ掛けてくる方は、実務未経験の方だったり、
法律は最低限しか知らないが実務はできる、と自称する方だったり、と、
議論の前提を欠いていたり、考え方に偏りがあるという場合が多い
(そのため議論をしても時間の無駄)、という気がしています。
(2008年11月作成)