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◎共同出願人と代理人の限界

 あるメーカX社と、そのメーカX社が製造する製品Aを販売するY社とがあった。
 Y社は販売会社であったために特許出願の経験がなかったが、
製品Aの新たな提案をしたのがY社であったため、
Y社にて商標出願を担当していたZ弁理士が、新たな製品Aの特許出願を担当することになった。

 X社とY社との共同出願が終了し、やがて審査請求の時期が来た。
この時点では、製品AをX社が製造し、Y社が販売するとビジネスは継続していたが、
拒絶理由通知が来る頃には、製品Aを介したX社とY社の関係は終了していた。

 拒絶理由通知を検討したZ弁理士は、減縮補正のネタと反論の余地を見つけ、
X社とY社のそれぞれの担当者に連絡した。
 X社からは、
   Y社への製品Aの販売が終了しており、他社への販売も見込みがないため、
   拒絶理由通知への反論はしなくて良い、
と返事が来た。

 Y社の担当者は、
   製品Aを他社から購入するようになったから、特許は必要ない
と言い出した。
 Z弁理士は、
   特許は、共同名義ならば、単独で実施できるのです。
   製品Aを製造させている会社からライセンス料を取れる可能性もあります。
と主張し、拒絶理由通知への対応の必要性を述べた。

 しかし、Y社の担当者は特許に詳しくないためか、理解できない。

   X社さんの意向に反することをするのは変だ

の一点張りである。

 Z弁理士は、先輩弁理士に相談した。その先輩弁理士は、

   残念だけど、あきらめた方がいい。
   Y社の担当者が納得しないことを、
   Y社の上司や担当役員レベルまでを説得するのは、
   期限もあることだし、無理だから。

とアドバイスした。Z弁理士は、

   代理人の限界なのでしょうか・・・

と残念がった。

(2009年1月作成)