地方出張の夜、食事をする場所を求めてぶらぶら歩き。
関東では桜が散って暫く経っているのに、北の町はまだまだ寒くてコートが欲しいくらいでした。
さて、見つけた屋台村のひとつに入り、ビールをゆっくりいただいた。
店主一人のそのお店に、常連さんらしいご婦人がお一人。ポツリポツリとおしゃべりを
続けていました。
私は注文する以外に口を開かず、
そのおしゃべりやら聞こえてくる80年代曲を聴いていましたが、
早くも酔いが回り始めた私に、声を掛けてきました。
こちらは初めてですか? お仕事か何かで?
お決まりの切り出しなのでしょうが、不快さは全く感じさせません。
カウンターの中からは、私のグラスやビール瓶が見えないということもありましょうが、、
もう一本飲まれますか?
と声を掛けられることもないし、
~が美味しいですよ、~はいかがですか?
とも言われない。かといって、退屈することもありません。
非常に心地良い時間を過ごさせていただきました。
来店時よりも更に寒くなった夜でしたが、
軽やかにホテルの部屋に戻ることができました。
店主が意識してそうしているのか、たまたまそうなったのかは分かりませんが、
何かをする、というのではなく、何かをしないことで別の空間を作り出す、
心地よさという「売り物」が素晴らしかった体験でした。
(2009年5月)