ある研究者Aさんから、論文発表を前に特許出願をするべきか否か、
を相談されました。
研究者としては、新たな発明などしていない、という意識だったようですが、
組織の知財担当者に促されて相談に至った、という経緯です。
A氏; 私の発表するグラフや結論は、既存のソフトウェアZ(無料配布)を使ったので、
新しいことなど、何もありませんよ。
私; そのグラフや結論を導くために、ソフトZを使うことは、
Aさんの分野の方なら、誰でも思い付くことですか?
A氏; 他のソフトを使うこともできるでしょうけれど、
私は、無料のソフトを使ったまでです。
私; Aさんの結論を導くのに、仮説を立てられ、
その仮説を実証するのに、ソフトZを使われたということですね。
では、その仮説を立てるのは、誰でも思い付くことでしたか?
A氏; その仮説が誰でも思い付くならば、論文発表などできませんね。
私; その仮説は、アルゴリズムとして記載できますよね?
まず、集めたデータをフィルタリングして、使うべきデータに絞って、
既存のデータベースからもデータを引っ張ってきて、
演算させて、グラフを描かせたのですから。
A氏; まあ、そういうことです。でも、その演算は、ソフトZですよ。
私; 今回の場合、発明の本質はアルゴリズムにあると思われます。
ソフトZは、そのアルゴリズムを実現するための道具に過ぎません。
A氏; う~ん、まだスッキリしません。
私; ここに複雑な形状をした、新たで画期的な部品があったとします。
その部品は、既存の工作機械で、複雑な工程を経て削り出して
完成させたとします。
工作機械が既存だから、新たな部品は発明ではない、と言えますか?
A氏; とすると、「複雑な工程」や「新たな部品」が発明に該当しそうですね。
どうやら、特許出願に値する発明を抽出できたようです。
(2015年12月作成)