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◎既存ソフトウェアと新たな発明との関係

 ある研究者Aさんから、論文発表を前に特許出願をするべきか否か、
を相談されました。
 研究者としては、新たな発明などしていない、という意識だったようですが、
組織の知財担当者に促されて相談に至った、という経緯です。

A氏; 私の発表するグラフや結論は、既存のソフトウェアZ(無料配布)を使ったので、
   新しいことなど、何もありませんよ。

私;  そのグラフや結論を導くために、ソフトZを使うことは、
   Aさんの分野の方なら、誰でも思い付くことですか?

A氏; 他のソフトを使うこともできるでしょうけれど、
   私は、無料のソフトを使ったまでです。

私; Aさんの結論を導くのに、仮説を立てられ、
   その仮説を実証するのに、ソフトZを使われたということですね。
   では、その仮説を立てるのは、誰でも思い付くことでしたか?

A氏; その仮説が誰でも思い付くならば、論文発表などできませんね。

私; その仮説は、アルゴリズムとして記載できますよね?
   まず、集めたデータをフィルタリングして、使うべきデータに絞って、
   既存のデータベースからもデータを引っ張ってきて、
   演算させて、グラフを描かせたのですから。

A氏; まあ、そういうことです。でも、その演算は、ソフトZですよ。

私; 今回の場合、発明の本質はアルゴリズムにあると思われます。
   ソフトZは、そのアルゴリズムを実現するための道具に過ぎません。

A氏; う~ん、まだスッキリしません。

私; ここに複雑な形状をした、新たで画期的な部品があったとします。
   その部品は、既存の工作機械で、複雑な工程を経て削り出して
   完成させたとします。
   工作機械が既存だから、新たな部品は発明ではない、と言えますか?

A氏; とすると、「複雑な工程」や「新たな部品」が発明に該当しそうですね。

 どうやら、特許出願に値する発明を抽出できたようです。

  (2015年12月作成)