コンテンツにスキップするには Enter キーを押してください

◎単なる着想者の主張

 ある会社Yが、ある技術の基礎研究を一段落させ、特許出願を完了させました。
その出願について、国内優先権を伴った出願をすることとなり、
打ち合わせを重ねていました。
 すると、出願人となった会社Yとは別の組織Zから、打ち合わせに参加したい
という申し出がありました。
 私としては、なぜZが、まだ公開されていない技術内容の打ち合わせに
参加を希望する旨の打診をしてきたのか、不思議でした。

 Y社の担当者からの説明を総合すると、組織ZはY社のお客様であり、
昨年の特許出願内容も開示している、とのことでした。
 その説明でも疑問がぬぐえないまま、組織Zを交えたミーティングが開催されると、
組織Zの意図がようやく分かりました。

  Y社が出願した内容に関する最初の着想は、組織Zに所属する人だった

というのです(その着想をしたという人は、ミーティングには参加していなかったが)。
 つまり、着想を提供したのだから、組織Zとしても、
やがて取得する特許権について、なんらかの権利がある、という考えがあったようです。

 私は、

   組織Zが、今回の特許出願の名義人(出願人)に加わる法的な理由はない。
   特許法は、発明者に「特許を受ける権利」が発生する、としているが、
   着想をされた、というその方は、「単なる着想をしただけ」であり、
   発明の実質的な完成に、何ら寄与していないと考えられるからです。

と、教科書通りの回答をしました。

 そのミーティング当日の夕方、組織Zからは、

   本件(特許出願)に我々は加えて貰わなくて良い

と連絡がありました。
 判って貰えて、本当にホッとしたのでした。
判ってもらえなかったとしたら、期限が迫っている国内優先権の出願前に、
元の出願の名義を変更しつつ、国内優先権の出願内容を固めていかなければならない
はめになったからです。

   (2017年5月作成)