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「(発明の)利用」が纏う悪いイメージ

特許法の法原理である「発明の保護」および「発明の利用」のバランス、
という話は、知的財産法においては、必ず伝えなければならないことのひとつです。
しかし、「発明の利用」という言葉があまりにも当たり前となるまで身に付いてしまった人間(いわゆる業界人)から、
学生さん(特に「創作系の学生さん)へ伝える際、注意しないとピンとこないこととなってしまう、と感じています。

一般社会(特に「創作」をする集団)において使われている「利用」という言葉は、
「盗用」、「悪用」を綺麗な言葉に言い換えただけ、というネガティブなニュアンスが
かなり含まれているからなのです。
一方、「知的財産にどっぷり漬かった業界人」が「保護」の対照語として使う「利用」は、(言うまでもなく)ネガティブではなく、積極的な「活用」の意味を含んでいます。

このギャップをしっかり認識せず、学生さんへ「発明の保護および利用」と、
さらっと喋って流してしまうと、少なくない学生さんが「利用のニュアンスが違う」と感じてしまい、スタックしてしまいます(場合によっては、特許制度そのものに対する反発心も産んでしまうおそれがあります)。

「発明の利用」という言葉を最初は使わずに、「発明の活用」と説明する。そうした上で、
条文上は「利用」という言葉になっている、といった説明の方が、
より良く伝わるという気がします。

言葉は生きている、と良く耳にしますが、
教える、という立場の人間は、変化している言葉の意味に敏感でなくてはならない、
と思うのです。

(2018年6月作成)